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“The Wallace Brothers” の ”Sims Records” でのレコーディングは，粗野でまだ磨かれていないソウルでした．商業的な価値は，必ずしも高くありませんでしたが，彼らの荒削りなボーカルは 洗練されていないことで より強調されました．トラックから伝わってくるエモーショナルの強さは，レコーディングされたときと同じくらい強く伝わってきます．究極的には，それがソウルミュージックの全てです．

“The Wallace Brothers” のバイオグラフィーについては，正確なものがなく，彼らは 詳細なインタビューを行っていないようです．私たちが知ることができるのは，唯一のアルバム（Sims LP 128）の裏面にあるライナーノーツです．”The Wallace Brothers” は，ジョージア州アトランタの出身で，アーチャー高校に通っていた いとこ の ”Johnny Simon” と ”Ervin Wallace” だったようです．それぞれ14歳と16歳までに，彼らはボーカルを共有するだけでなく，”Johnny Simon” がサックス，”Ervin Wallace” がギターを演奏し，6人のバンドとして構成されていたようです．

”Johnny Simon” と ”Ervin Wallace” は，1963年に地元の “Royal Records” で ”Faith”（Royal 127）をレコーディングし，シンガーとしてのキャリアをスタートさせました．”Faith”（信じること）は，非常にヘビーなソウルです．オルガンとサックスをフィーチャーしたスローナンバーで，その若いハーモニーのボーカルとゴスペルのフレージングがその後の音楽活動に踏襲されました．それは，ナッシュビルの “Sims” レーベルのオーナー ”Russell Sims” が注目するところとなり，”Faith” は ”Sims Records” からリイシューされました．

彼らの次のシングルレコード “Precious Words” は，1964年の春に登場し，彼らのデビュー曲 ”Faith” よりも さらにゴスペルをベースにしていました．”Johnny Simon” と ”Ervin Wallace” のボーカル，そしてピアノとオルガンのバック演奏は，ゴスペルの影響を示しています．“Precious Words” は，南部で十分に売れ，”Cash Box” の R&Bチャート に6週間登録され，31位になりました．このマイナーな成功は，1964年秋にリリースされた ”Lover's Prayer”（Sims 189）の大きな成功につながりました．このシングルレコードは，初期のサザンソウルの代表作で，1960年代後半のマッスルショールズ・クラシックの先ぶれとなるバラードスタイルでした．そして “Cash Box” と ”Billboard” のR&Bチャートの両方でスコアを獲得しました．

“Russell Sims” は，“Lover's Prayer”（Sims 189）で，彼の若いスターたちにLPをレコーディングさせることに十分な自信を持つことができました．LPは，“Soul Soul and More Soul”（Sims LP 128）として登場し，1964年5月に “Fame Recording Studio” でレコーディングされました．“The Wallace Brothers” は，マッスルショールズへの最初の黒人の訪問者になりました．このLPには，初期のシングルレコードに加えて，”She Loves Me Not” などの4曲が追加されました．

“The Wallace Brothers” は，1965年以降 “Sims Record” で5枚のシングルレコードをリリースしていて，ワルツのような ”I'll Step Aside”，バラード ”Hold My Hurt For A While”，サックスとブルージーなギターが特徴的な ”Stepping Stone” などのベスト曲が含まれています．そして “Otis Redding” のクラシックなバラード ”This Arms Of Mine” は，本当に素晴らしいバージョンです．この “The Wallace Brothers” バージョンは，力量のあるサザンソウルです．素晴らしいホーンセクションと強力な「震える」ギターは，このバージョンを彼らの最高のカットの1つにしています．

“Russell Sims” は，レコードビジネスが困難になっていることに気づいていて，1968年までにビジネスの全てを手放しました．”The Wallace Brothers” は，”Stan Lewis” の “Jewel Records” と契約を交わし，1968年と1969年に ”Barry Beckett” と “Junior Lowe” がプロデュースしたマッスルショールズ・サウンドの3枚のシングルレコードをリリースしました．最も優れた曲は，”Dan Penn” と” Spooner Oldham” が書いたバラード ”I Need Someone” と “Clarence Carter” のカバーバージョン “I Stayed Away Too Long” でした．しかし， これらのシングルレコードは，チャートインすることはなく, ”The Wallace Brothers” は分裂しました．”Johnny Simon” は，"The Naturals" のメンバーとしてさらに数年間ビジネスにとどまり，”Quadran Records”， “Shout Records” でレコーディングを行い，”Calla Records” では ”I Can't Share You” でマイナーヒットを記録しました．

※ "Sir Shambling’s Deep Soul Heaven" のブログ "The Wallace Brothers" を要約しました．
Link > http://www.sirshambling.com/artists_2012/W/wallace_bros/index.php

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Sims_Records
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/FAME_Studios
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Muscle_Shoals,_Alabama
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Otis_Redding
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Southern_soul
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Stan_Lewis_(record_label_owner)
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Barry_Beckett
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Dan_Penn
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Spooner_Oldham
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Clarence_Carter

■ Original Sims LP

1965年に “Sims Records” からリリースされた ”Sims LP 128 – Soul Soul and More Soul" は，”The Wallace Brothers” の ”Sims” 音源が12曲 収録されたLPレコード．初期のシングルレコード8曲に加えて，フェイム・スタジオでレコーディングされた4曲（Side 1-5，Side1-6，Side 2-4，Side 2-6）が追加されています．ジャケットは，スーツ姿の3人がポーズをとっている 背景のないデザイン．ジャケットの表面と裏面に写っている人物の名前は，残念ながら資料がないので分かりません．

　　 　●Album back cover information

ジャケット裏面のクレジットには，収録の場所や日時，ミュージシャンなどが記載されています．”Johnny Simon”（ボーカル，サックス）と ”Jimmy Simon”（サックス）は，名前から 兄弟のように思われます．プロデュースの “Russel Sims” は ”Sims Records” のオーナー，エンジニアの ”Rick Hall” は フェイム・スタジオを設立した音楽プロデューサーです．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Rick_Hall

■ CD Album

1996年に米国の "Excello Records" からリリースされたCD "CD 3014 - The Wallace Brothers Lover’s Prayer” は，"Sims Records" の音源22曲が収録されたコンプリート・アルバム．1995年に英国の ”Kent Soul” からリリースされたCD "CDKEND 128” と同じ内容．トラック01からトラック12までがアルバム ”Sims LP 128 – Soul Soul and More Soul" の音源，トラック13からトラック22までがアルバム以降の ”Sims” 音源です．

Link > http://www.soulfulkindamusic.net/wallacebrothers.htm

”The Wallace Brothers” のLPレコード ”Sims LP 128 – Soul Soul and More Soul" は，実は “The Kelly Brothers” の LPレコード ” Sims LP 137 - Too Much! Soul” を探しているときに見つけました．”The Wallace Brothers” の ”Sims” 音源は，初期のソウルミュージックで，まだ洗練されていないところが 新鮮な感動を与えてくれます．注目は，デビュー曲の “Faith” ，シンプルな曲調ながら息の合ったソウルフルなボーカル・デュオで素晴らしい．この曲，私は 特にお気に入りです．さて，”Sims LP 128 – Soul Soul and More Soul" 以降の音源は，まさにファイム・スタジオのレコーディングで，力量のあるサザンソウル，こちらも なかなか聴きごたえのある曲が揃っています．

ジャケットのコンディションは，表面に小さなスレがあります．それ以外は，汚れや貼り合わせの劣化は なく，コンディションとしては 良好．ラベルは，スピンドルの跡も少なく綺麗です．レコード盤は，細かなスレや傷がありますが，針飛びや大きなノイズは ありません．

オレンジのラにベルに黒の文字，トップに "Sims Records" の ロゴ．1966年にリリースされた "The Kelly Brothers" の "Too Much! Soul"（Sims LP 137）と同じラベルデザインです．