"The Kelly Brothers" は，1948年に ミシシッピ州シェルビー出身の兄弟 "Robert Kelly"（テナー），"Curtis Kelly"（ハイテナー），"Andrew Kelly"（バリトン），ミシシッピ州ヘルナンド出身の "Offe Reese" （テナー）の4人がシカゴで結成したゴスペルグループ．1955年に "C. H. Brewer Records" から ファーストシングル "God Said He Is Coming Back Again" をリリース，このセッションから新しいメンバーの "T. C. Lee" が参加しました．グループは，1956年から1959年にかけて "Vee-Jay Records"，"Nashboro Records" に3枚のシングルを残した後，1960年に "King Records" 傘下の "Federal Records" に移籍，シングル7枚とアルバム "King 810 - Sing A Page Of Songs From The Good Book" をリリース．"Federal Records" のファーストシングル "I've Been Striving For So Long" で知名度を上げたグループは，1961年に "He's The Same Today" がヒット，この頃には "The Clara Ward Singers"，"Soul Stirrers"，"Dixie Hummingbirds"，"The Mighty Clouds Of Joy" 等と全米ツアーを行うようになりました．

音楽シーンでは，1957年に "Sam Cooke" がゴスペルから "Rock'n'Roll" へ転向，その後 ショービジネスの世界で成功．"The Kelly Brothers" は，"Sam Cooke" のゴスペル時代を知っていて，"Sam Cooke" の成功に後押しされるかのように，1963年にゴスペルから世俗的なR&Bのグループとして音楽活動をスタートしました．親会社の "King Records" から名前をとって "The King Pins" に改名したグループは，"Federal Records" の2枚目シングル "It Won't Be This Way Always" が R&Bチャート12位を記録，1963年から1964年にかけてシングル7枚とアルバム "King 865 - It Won't Be This Way Always" をリリースしました．

1964年 "The King Pins" は，"Federal Records" の活動に終止符を打ち，シカゴから新天地のテネシー州ナッシュビルの "Sims Records" に移籍，グループ名を "The King Pins" から元の "The Kelly Brothers" に戻しました．グループは，1964年から1967年にかけてシングル11枚とアルバム "Sims LP-137 - Too Much! Soul" をリリース，殆どの曲は "Robert Kelly" と "Curtis Kelly" が書き，レコーディング は アラバマ州マッスルショールズの "Fame Recording Studio" と "Nashboro Records" が運営していたナッシュビルの "Woodland Recording Studio" で行われました．"Sims Records" での2年間は，足踏み状態でしたが，1966年 ナッシュビルの敏腕プロデューサー "Bob Holmes" と連携した "Falling In Love Again" がビルボードのR&Bチャート39位を記録，1967年までに "Make Me Glad"，"Can't Stand It No Longer"，"You Put Your Touch On Me" などの良質なサザンソウルをリリースしました．

1967年 "Sims Records" のオーナー夫婦 "Russell and Carol Sims" の資金が底をつき，各社に資産を売却． "The Kelly Brothers" の音源は，"Nashboro Records" が取得し，系列会社の "Excello Records" からリリースされることになりました．1968年には，"Sims Records" の音源10曲と新たにメンフィスの "Hi Records" のスタジオでレコーディングされた "That's What You Meant To Me"，"Comin' On In" の2曲が収録されたアルバム "Excello 8007 - Sweat Sooul" がリリースされました．

1968年から1970年にかけて，"The Kelly Brothers" は "Excello Records" でシングル4曲をリリース．1969年には，新しい試みとして ノーザンスタイルのPopナンバー "Crystal Blue Persuasion"（ "Tommy James and The Shondells" のカバーバージョン）をリリースしましたが，ヒットに至らず，"Excello Records" との契約を失ったグループは シカゴに戻ることになりました．"Offe Reese" は，後に次のように語っています．

「シカゴに戻ってしばらくしてから，少しの間 R&Bを歌っていましたが，人々は私達に戻ってきてゴスペルを歌ってほしいと話を掛け始めました．私達は，もう一度ゴスペルを再開させることにしました．」

参考：Ace Records CDKEND 137 - Sanctified Southern Soul / The Kelly Brothers　1996年
　　　ライナーノーツ ： "Robert Pruter"

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Kelly_Brothers
Link > https://www.discogs.com/ja/artist/842196-The-Kelly-Brothers
Link > http://www.soulfulkindamusic.net/kellybrothers.htm
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Sam_Cooke
Link > http://en.wikipedia.org/wiki/Sims_Records
Link > http://en.wikipedia.org/wiki/Southern_soul
Link > http://en.wikipedia.org/wiki/FAME_Studios
Link > https://dereksmusicblog.com/2017/05/10/bob-holmes-nashville-soul/

海外のオークションで収集した "The Kelly Brothers" / "The King Pins" のLPレコード．"King 810 - Sing A Page Of Songs From The Good Book" は，ドイツのオークション，その他は 米国のオークションで落札しました．"Sims LP-137 - Too Much! Soul" は，オークションでもめったに出品されない珍しいLPレコード．コンディションは，"Creed 3015 - I Still Remember" にドリルホール，"Sims LP-137 - Too Much! Soul" のジャケットに擦れがあります．それ以外は，大きな損傷，汚れは無く，レコード盤のほうも 針飛びや気になるノイズは ありません．

　　－ Gospel Albums －
　　● King 810 - Sing A Page Of Song From The Good Book - The Kelly Brothers
　　● Creed 3015 – I Still Remember - The Kelly Brothers

1996年に英国の "Ace Records" からリリースされたCD "CDKEND 137 - The Kelly Brothers Sanctified Southern Soul" は，未発表5曲を含む "Sims Records" と "Excello Records" の音源28曲が収録されたアルバム．R&Bライターの "Robert Pruter" が書いた長文のライナーノーツは，"The Kelly Brother" を知る上で貴重な資料．このライナーノーツは，"The Kelly Brothers" のプロフィールで参考にさせてもらいました．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Pruter

"The Kelly Brothers" は，1966年に米国のテレビシリーズ "The !!!! Beat"（26回）の7回目，8回目に映像デビュー，"Barbara Lynn"，"Joe Tex" 等と出演しました．このライブ映像は，YouTube にアップロードされていて，エンディングの "Amen" を含む5曲が視聴できます．ちなみに司会は，ナッシュビル WLAC のDJ "Hoss Allen"，出演メンバーは "Robert Kelly"，"Cutis Kelly"，"Andrew Kelly"，"Offe Reese"，ギターリストの "Dillard Crume"．"The !!!! Beat" は，"Bear Family Records" からDVDがリリースされているようです．

　　－ The !!!! Beat 1966 / The Kelly Brothers －
　　● Falling In Love Again：Lead：Curtis Kelly（Show 7）
　　● I'd Rather Have You : Lead：Robert Kelly（Show 7）
　　● Amen : All（Show 7）
　　● Make Me Glad : Lead：Curtis Kelly（Show 8）
　　● You're That Great Big Feeling : Lead：Robert Kelly（Show 8）

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/The_!!!!_Beat
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_%22Hoss%22_Allen
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/WLAC
Link > https://www.bear-family.com/various-the-beat-vol.1-dvd

1970年代～1980年代は，ソウルミュージック全盛時代．立ち読みしていた月刊音楽雑誌「SOUL ON」の影響もあり，とりわけサザンソウルに興味があって，ご多分に漏れず "Otis Redding"，"O.V. Wright"，"James Carr" なんかのアルバムを聴いていたわけです．レコードショップで DooWop/R&B と サザンソウル を探す日々，吉祥寺の芽瑠璃堂には 推薦盤と その解説が書かれたタグが店の壁に飾ってあって，そこで見つけたのが "The Kelly Brothers" のリイシュー盤LP "Excello 8007 - Sweet Soul" でした．ブラザーズという かっこいいネーミングもさることながら，少し野暮ったいレコードジャケットのデザイン，サウンドは泥臭いサザンソウルで 期待通りの素晴らしいアルバムでした．ジャケットの裏面には "Fame Recording Studio"，"Hi Recording Studio" の表記がありましたね．曲のほうは，ギターのイントロが印象的な "Falling In Love Again"，ミドルテンポのバラード "Make Me Glad"，スローバラードの "Comin' On In" あたりがお気に入りでした．

Link > http://blog-ocha-soul.diskunion.net/Entry/5455/
Link > https://ja.wikipedia.org/wiki/VIVID_SOUND (芽瑠璃堂)

1948年から1970年代初頭にかけて活動した "The Kelly Brothers" は，ベテランのボーカルグループ として1960年代に秀逸なアルバムを多数リリース．全盛期の 1966年には，伝説のテレビ番組 "The !!!! Beat" に出演を果たしました．ゴスペルからR&B，そして ソウル へと変遷しながら，最後にゴスペルに回帰したグループ．それは "The !!!! Beat" のエンディングで 歌われた "Amen" にも表れていて，グループ結成当初から培われたスピリチュアルなバックグラウンドと音楽スタイルが本来のグループの姿だったように思われるのですが ...