DooWopボーカルグループ “The Nutmegs” は，出身地 コネチカット州ニューヘブン，”Bill Emery”（リード），”Walter Singleterry”（ファーストテナー），”James ‘Sonny’ Griffin”（セカンドテナー），”James ‘Coco’ Tyson”（バリトン），”Leroy Griffin”（ベース）のクインテット ”The Lyres” が前身グループ．1953年にプロモーターの ”Charlie Johnson” に出会ったグループは，地元の ”Klik Records” でセッションを行った後，”Leroy Griffin” のリードで ”Ship Of Love” / “Playboy”（J&G 101）をリリースしました．しかし，このシングルは ”Charlie Johnson” の資金不足もあってプロモートがうまくいかず売れませんでした．

1954年 メンバーのラインナップを変更，“Leroy Griffin”（リード），”James ‘Sonny’ Griffin”（ファーストテナー），”James ‘Coco’ Tyson”（セカンドテナー），”Bill Emery”（バリトン）に ”Leroy McNeil”（ベース）が加入． グループは，1954年後半にニューヨークを訪れ，”RCA Records” のボーカルグループ ”The Du Droppers” と出会いました．”The Du Droppers” は，”Herald Records” の社長 ”Al Silver” にグループを紹介，コネチカット州出身であることを伝えると，州の愛称であるナツメグからグループ名が “The Nutmegs” に決まりました．

1955年3月 ”Story Untold” がリリースされると，すぐにR＆Bチャートに飛び込み，7月までに全米R&Bチャート2位を記録しました．”The Crew-Cuts” は，”Story Untold” をカバーしPopチャート16位を記録， “The Nutmegs” のバージョンがチャートにとどまるのを排除しました．1955年8月 “Herald records” は，”Ship Of Love” でフォローアップ，10月までにニューヨークを中心にR＆Bチャ－ト13位とPopチャート5位を記録しましたが，全米ヒットには 至りませんでした．

“The Nutmegs” は，ニューヨークの ”Apollo Theater” のステージに出演，わいせつなダンスをしていると非難されたため，DJの ”Alan Freed” は グループをプレイリストから外しました．”Leroy McNeil” と ”Bill Emery” は，”Alan Freed” のショーに出向いて謝罪し，"Hunch" と呼ばれるダンスをしているだけだと説明．”Alan Freed” は，説明と謝罪を受け入れ，次回の ”Brooklyn Paramount Theater” への参加を許しました．グループは，ツアーショーにも追加され，”The Moonglows” , “The Spaniels” , “The Harptones” , “Chuck Berry” 等と共演しました．この間，次のシングルとして "Whispering Sorrows" / “Betty Lou” をリリース，”Herald Records” は ”Betty Lou” を押すことを選択しましたが失敗，間もなくして ”Bill Emery” がグループを去り，”The Five Dukes” の ”Sonny Washburn” と代わりました．

1956年6月 “The Nutmegs” は，4枚目のシングル ”Key To The Kingdom” をリリース，”Billboard” マガジン（1956年6月16日）にレビューされ，洗練されたバラードと評価されましたが，ヒットすることはありませんでした．次のシングル ”Comin' Home” は，12月にリリースされましたが，それまでに ”The Nutmegs” は勢いを失っていました．

"The Nutmegs" は，1963年から1966年にかけてイーストコーストで流行したアカペラの先駆者となり，以前にレコ―ディングしたシングルのアカペラバージョンでニューヨークを中心に人気となりました．“Let Me Tell You” ，”The Way Love Should Be” ，”Why Must We Go To School" ，”Down In Mexico” ，”You're Crying” は，ローカルヒットを記録ましたが，全米チャートに返り咲くことはありませんでした．

Link > https://www.allmusic.com/artist/the-nutmegs-mn0000892763/biography
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/The_Du_Droppers
Link > http://bsnpubs.com/nyc/herald/herald.html
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/The_Crew-Cuts
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Apollo_Theater
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Freed
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Brooklyn_Paramount_Theater
Link > http://www.uncamarvy.com/5Dukes/5dukes.html
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Billboard_(magazine)

1960年に ”Herald Records” からリリースされたEPレコード ”The Nutmegs”（EP 452）は，R&Bチャート2位のスマシュヒットを記録した ”Story Untold” を含む4曲が収録．”Herald Records” の厚紙ジャケットのEPレコードは，“The Fabulous Mello-Kings”（EP 451）と ”The Nutmegs”（EP 452）の２枚があるようです．いずれもカラー印刷されたジャケットの めずらしいEPレコード，1959年頃から始まった “Oldies But Goodies” のトレンドからリリースされたものと思われます．

Link > https://www.vocalgroupharmony.com/3ROWNEW/StoryUntold.htm
Link > https://www.discogs.com/ja/Various-Oldies-But-Goodies-Vol-1/master/

1970年代にリリースされた “Relic 5002 - The Nutmegs Featuring Leroy Griffin” は，無伴奏のアカペラセッション，1957年に 地元ニューヘブンに戻ったグループが，"The Rajahs" の名前で “Klik Records” に残した音源をLP化したものです．同じく ”Relic Records” の “Herald 5011 - The Nutmegs Greatest Hits” は，”Herald” 期の1955年から1959年にかけてリリースされた12曲にアカペラの ”Shifting Sands” が追加されたLPレコードです．1976年代にリリースされた “Strawberry Records” の “STW-6003 - The Nutmegs Street Corner Soul” は，無伴奏のアカペラセッションで，ロックンロール・リバイバルのブーム最中の1976年にリリース，アルバムのパーソネルは ”Harold Jaynes”（リード），”James ‘Sonny’ Washburn”（テナー），” James ‘Sonny’ Griffin”（テナー），”James ‘Coco’ Tyson”（リード，バリトン），”Leroy McNeil”（ベース）．　“STW-6003” は，”Harold Jaynes” がリードを務めているので，1969年に亡くなった ”Leroy Griffin” 以降のレコーディングと思われます．

Link > https://www.discogs.com/ja/label/95561-Klik-Records-2

1994年に "Collectables Record" からリリースされたCD "The Nutmegs Greatest Hits" は，”Herald Records” のシングル14曲，“Tel Records”（オーナー ”Morton Craft” ）のシングル2曲，アウトテイクの ”Story Untold” が収録された17曲構成のコンプリートアルバム．注目は，1960年に “Tel Records” からリリースされた ”A Dream Of Love” ．ホーンセクションのイントロが印象的な このバラードは，”Leroy Griffin” のエンジェル・ボイスに ひかえめなベースが絡むハーモニーが絶妙で，秀逸なDooWopに仕上がっています．

Link > https://www.discogs.com/label/275338-Tel-Records

さて，”The Nutmegs” に関する資料ですが，1979年に発刊されたDooWop/R&B研究誌 "Treasure Chest Of Musty Dusties” （権藤陽一郎氏編集）のNo.9に 「ザ・ナットメグス物語，その複雑なるグループ史の謎を解く」という特集記事（1983年）がありました．余談ですが，"Treasure Chest” は 1冊を残して紛失しましたが，現在は 友人から9冊を借り受けて，懐かしく読ませてもらっています．ウェブサイトで ”The Nutmegs” の資料を探しみたところ，”ALLMUSIC” の “Bryan Thomas” （フリーランスライター/評論家）が書いたバイオグラフィーを見つけたので参考にさせてもらいました．

Link > https://www.allmusic.com/artist/the-nutmegs-mn0000892763/biography
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/AllMusic

DooWopファンにとって忘れられないグループが “The Nutmegs”．学生時代に購入した ”Relic Records” のLPレコード “Herald 5011 - The Nutmegs Greatest Hits” を聴いて，DooWopハーモニーの素晴らしさに感動した記憶があります．特にバラードの "Story Untold"，"Key To The Kingdom"，"A Love So True" は，”Leroy Griffin” のリードとバックのコーラスワークが見事で，イーストコースト系では お気に入りのグループでした．それにしても，”Comin' Home” で聴ける “Leroy McNeil” のコミカルなベースは，なかなか出色のできです．"The Nutmegs" のアカペラも 捨てがたいのですが，やはり "Herald" 期の伴奏が入った曲が最高ですね．

ジャケットは，上下の貼り合わせが部分的にオープン状態でしたが，紙用の水性ボンドを使用して補修しました．カバー写真は 良好，裏面には 手書きのプライス表記があります．レコード盤は，ほぼ新品の状態．

1960年にリリースされた "HEP 452" は，黄のラベルに黒の文字，トップに "Herald" の垂れ幕がかかったトランペットのロゴ．

ウェブサイト "45cat" のリストを見ると，1958年までは 黄のラベルに黒の文字，1958年中頃になると，ラベルがマルチカラーに変更になったようです．1960年頃になると，マルチカラーのラベルと黄のラベルが混在しています．ロゴの "Herald" は，1958年頃まで中世ヨーロッパの字体でしたが，1958年中頃になると，ゴシックのような文字に変更になっています．"45cat" のリストには，"海賊盤" が載っていて参考になります．

Link > http://www.45cat.com/record/hep452
Link > http://www.45cat.com/label/herald-us
Link > http://www.45cat.com/label/herald-us/5