R&B / ゴスペル・シンガー “Lula Reed” は，1926年 オハイオ州ジェファーソン郡で生まれました．幼少期に家族と一緒にオハイオ州ポートクリントンに移り，地元の教会の聖歌隊で歌い始めました．彼女は，盲目のゴスペル歌手 “Professor Harold Boggs” に師事し， その後 オハイオ州トレド の オーディションで 50人以上の 応募者を勝ち抜き， ”Sonny Thompson” バンドのボーカリストとして選ばれました．”Sonny Thompson” のレコードには，ボーカルとしてクレジットされ，1951年末にオハイオ州シンシナティの “King records” からレコードデビューを果たしました．彼女が歌った “I'll Drown In My Tears” は， ”Henry Glover” が書いた曲で，“Billboard” の R&Bチャートで5位を記録，この曲は ”Ray Charles” が ”Drown in My Own Tears” として1956年に再レコーディングし，商業的な成功を収めました．

“Lula Reed” と ”Sonny Thompson” が 次にリリースした “Let's Call It A Day” も ”Henry Glover” が書いた曲 で， “Billboard” の R&Bチャートで 7位を記録しました．彼女は，”King Records” 向けの作品の多くで自分の名前でクレジットされましたが，”Sonny Thompson” との共演は続け，2人は 1954年に結婚しました． 彼女は，多才な歌手であり，ゴスペル曲から R&B や ブルース まで 幅広いジャンルの曲を歌いました．彼女の1954年の作品 ”Rock Love” は，後に “Little Willie John” によってカバーされました．彼女は，人気を継続し，1954年の “Cash Box” の年間投票でR&Bシンガーとして4位に選ばれ，1956年まで ”King Records” でレコーディングを続けました．しかし，“Lula Reed” は，その後 ヒットに恵まれませんでした．1958年 ”King Records” は，彼女の作品を集めたアルバム ”King 604 – Blue and Moody” をリリースしました．

“Lula Reed” と ”Sonny Thompson” は，1958年から1960年まで “Chess Records” 傘下の ”Argo Records” でレコーディングを行い，1961年にシンシナティに戻って “King Records” 傘下の “Federal Records” でレコーディングを始めました．彼女は，その後 2年間で “Federal Records” に7枚のシングルをリリース，そのうちいの数曲は “Freddy King” によって 伴奏されましたが，どれもチャート入りすることは ありませんでした． 1962年 “Federal Records” は，アルバム “King 777 - Boy-Girl-Boy” をリリース，その後，彼女は ”Ray Charles” が立ち上げた “Tangerine Records” に移籍し，1967年までに 5枚のシングルをリリースしました．

その後 “Lula Reed” は，音楽業界を離れました．後に 彼女は，世俗的なR&Bを歌い，レコーディングしていた自分のキャリアについて，家族や友人といつも語り合い，孫娘たちに彼女の足跡をたどってほしいと願っていました．彼女は，2008年にミシガン州デトロイトで 82歳で亡くなりました．

※　ウェブサイト "Mandonguilla Blues - Lula Reed" ，"Wikipedia - Lula Reed" を参考にしました．
Link > https://sentirelblues.blogspot.com/2017/01/lula-reed.html
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Lula_Reed

Link > https://www.discogs.com/ja/artist/1262934-Prof-Harold-Boggs
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Sonny_Thompson
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/King_Records_(United_States)
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Billboard_Top_R%26B_Records_of_1952
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Glover
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Ray_Charles
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Little_Willie_John
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Cashbox_(magazine)
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Argo_Records
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Federal_Records
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Freddie_King
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Tangerine_Records_(1962)

“Lula Reed” のLPレコードは，1958年に “King Records” からリリースされ ”King 604 - Blue and Moody“ ， 1962年に 同じく “King Records” からリリースされた “King 777 - Boy-Girl-Boy” の2枚．オリジナル盤は，とても入手困難，そこで 米国のオークションで “Highland Music” からリイシューされたLPレコードを購入しました．1980年代後期にリリースされた このリイシュー盤は，音質的にも 良好，ちょっと残念なのが，"King 604“ の ジャケット裏面のデザイン（5枚のLPの写真）がオリジナル盤と異なることです．このLPレコードは，10年位前に購入したものですが，現在は このリイシュー盤も入手困難なようです．

少し話がそれますが，テネシー州ナッシュビルの “Gusto Records” は，1975年に “King” レーベルの版権を買い取り，”King / Federal / Deluxe” レーベルの音源を復刻しました．1980年代後半になると，“Gusto Records” の子会社と思われる “Highland Music” が LPレコードの復刻を行っています．“Gusto Records” のLPレコードは，厚紙ジャケットでしたが，“Highland Music” のジャケットは 「ペラジャケ」と呼ばれる 薄紙ジャケットです．ラベルは，どちらも青，”Gusto Records” の “King” ロゴは 1960年代後期のクラウンの有るレプリカ，”Highland Music” の “King” ロゴは それ以前のクラウンの無いレプリカです．

“Lula Reed” のLPレコードの話しに戻ると，”King 604 - Blue and Moody“ は 1951年から1956年にかけて ”King Records” からリリースされたシングル音源を編集したアルバム，ヒットした “I'll Drown In My Tears”， “Let's Call It A Day” を含む12曲が収録されています．“King 777 - Boy-Girl-Boy” は，1955年から1962年にかけて “King Records” と ”Federal Records” のシングル音源を編集したアルバム，”Freddy King” とのデュエット3曲（ Side 1-1, 2-1, 2-4 ）を含む12曲が収録されています．

Link > https://bsnpubs.com/king/09kinggusto/09kinggusto.html
Link > https://www.soulfulkindamusic.net/lreed.htm

”Lula Reed” の CD音源は，2016年に英国の “Jasmine Records” からリリースされた "JASMCD 3078 - I’m A Woman But I Don't Talk Too Much” が 最も充実した内容．このCDは，”Lula Reed” の “King / Federal” 期の音源に加え，”Chess Records” 傘下の “Argo Records” からリリースされた音源6曲を含む30曲が収録されたアルバムです．選曲は，LPレコード ”King – 604” と “King - 777” とのダブりが少なく，コレクターには ありがたいですね．注目は，やはり “King” 期の未発表2曲と “Argo” 期の6曲でしょう．特に “Argo 5333 - Come On Home” は，”The Moonglows” の “Harvey Fuqua” が書いた曲，とてもラブリーなバラードでお気に入りです．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Harvey_Fuqua

“Lula Reed” は，R&Bの他にも，ゴスペル，ブルースなど，さまざまな音楽ジャンルで活動，ソウルフルで力強い声質と音楽的な多様性によって，当時のR&Bシーンで注目される存在となっていたようです．しかし，1967年のシングルリリースを最後に音楽業界から去り，二度と戻ることはありませんでした．CD “JASMCD 3078” のライナーノーツには，その文末に次のような記述があります．

「 音楽研究者が 彼女にコンタクトを取ろうとしたとき，彼女は “Lula Reed” であることを否定した．彼女のような重要で実に才能ある歌手が，自分のキャリアを捨てて人生の大半を費やしてしまったことは 悲劇的だが，少なくとも 私たちは まだ彼女の歌唱を楽しむことができる．」

どのような わだかまりがあったかは，知るよしもないのですが，“Wikipedia – Lula Reed” を見るかぎりでは，彼女は 世俗的なR&Bを歌い，レコーディングしていた自分のキャリアについて，家族や友人といつも語り合っていたようです．

ウェブサイト “VinylBeat.com” の ”Album Cover Gallery” は，私にとって バイブル的なコンテンツ，”#40” の “The King / Federal R&B Grail” は 毎度 参考にさせてもらっています．そこで見つけた ”604 Lula Reed” を 調べてみると シングル 36枚 72曲をリリースしていました．しかし，その知名度は 著しく低く，2016年にリリースされた CD “JASMCD 3078” のおかげで 知られるようになったと思います．残念ながら ”Lula Reed” は，1953年以降 ヒットに恵まれなかったのですが，残された曲は まさに “Blue and Moody" な素晴らしい音源と言えるでしょう．

Link > https://vinylbeat.com/album-40-King.html