“Huey Smith” は，1934年にニューオーリンズで生まれ，15歳でピアノを弾き始めました．1950年代初頭，彼は ニューオーリンズの伝説のギタリスト “Earl King” と “Guitar Slim” をサポート，すぐに人気のセッション・ピアニストになりました． “Huey Smith” は，ニューオーリンズ の R＆Bシーンで ”Smiley Lewis”， “Lloyd Price”， ”Little Richard” の主要なレコードで演奏．1950年代半ばには，自身のバンド ”The Clowns” を率い始め，地元で人気のあった女装のブルースシンガー ”Bobby Marchan” をリードボーカルに起用しました．

“Huey Smith and The Clowns” は，”Ace Records” と契約，1957年に “Rockin' Pneumonia and The Boogie Woogie Flu”（Ace 530） をリリース，ボーカルには ”Sidney Rayfield” と “John Williams” が参加．この曲は，R＆Bチャート5位のヒットを記録，翌年の1958年には グループの最大ヒット “Don't You Just Know It” （Ace 535）をリリース，Popチャート10位，R＆Bチャート4位を記録しました．1959年， “Huey Smith” は，オリジナル曲 “Sea Cruise” のトラックに ”Ace Records” の白人R&Bシンガー ”Frankie Ford” のボーカルをオーバーダビングさせました．その結果，この曲は 全米ヒットし Popチャート14位，R＆Bチャート11位を記録しました．

“Huey Smith” は，“Rockin' Pneumonia and The Boogie Woogie Flu” のヒットを再現するために，同じタイプの ノベルティ・ソング "Tu-Ber-Cu-Lucas and The Sinus Blues" （Ace 571） をリリースしましたが， 成功することは ありませんでした． ”Bobby Marchan” は，1960年に ソロ・シンガーとして ”Fire Records” からリリースした "There Is Something On Your Mind"（Fire 1022）でR＆Bチャート1位のヒットを記録，その後 ”The Clowns” を離脱しました．

”Bobby Marchan” が “The Clowns” から抜けた後，グループのボーカリストは 女性シンガー ”Gerry Hall” と男性シンガー ”Curley Moore” に代わりました．”Huey Smith” は，一時的に ”Imperial Records” に在籍，1962年にシングル “Pop-Eye”（Ace 649） のために “Ace Records” に戻りました．1960年代，彼は レコーディングの合間に，”The Clowns” だけでなく，別のグループの “The Pitter Pats”，”The Hueys” とツアーを行いましたが，チャートに返り咲くことは なく，”Huey Smith” は 最終的に宗教の世界に転向し，音楽業界を去りました．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/New_Orleans_rhythm_and_blues
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Huey_%22Piano%22_Smith
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Earl_King
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Guitar_Slim
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Smiley_Lewis
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Lloyd_Price
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Little_Richard
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Bobby_Marchan
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Ace_Records_(United_States)
LInk > https://en.wikipedia.org/wiki/%22Scarface%22_John_Williams
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Frankie_Ford
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Curley_Moore
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Imperial_Records

1959年に “Ace Records” からリリースされたLPレコード "Having A Good Time"（Ace LP-1004）は，ヒット曲 "Rockin' Pneumonia and The Boogie Woogie Flu"（Side 1- 1），”Don't You Just Know It”（Side 2-2）を含む ”Huey 'Piano' Smith” の音源が12曲 収録されたファ－ストアルバム．主なセッション・メンバーは， "Bobby Marchan" （ボーカル），"Gerri Hall"（ボーカル），"Curley Moore"（ボーカル），”John Williams” （ボーカル），"Huey 'Piano' Smith"（ピアノ），"James Booker"（ピアノ），Lee Allen（サックス）, "Alvin 'Red' Tyler"（トランペット），"Earl King"（ギター）, "Frank Fields"（ベース） ，"Charles Williams"（ドラムス）．底抜けに明い ニューオーリンズ R＆B が堪能できる このアルバムは，まさに至極の一枚です．ユーモラスで ちょっと センシティブ な歌詞の ”Don't You Just Know It” は，日本のビールのCMソングにも使われたようですが，思わず “♪ Gooba, gooba, gooba, gooba ♪" と歌ってしまいますね．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Curley_Moore
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/%22Scarface%22_John_Williams
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/James_Booker
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Lee_Allen_(musician)
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Alvin_Tyler
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Frank_Fields
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_%22Hungry%22_Williams
Link > https://www.lyrics.com/lyric/HueyPianoSmith/Dont+You+Just+Know+It

1961年に同じく “Ace Records” から リリースされた LPレコード "For Dancing"（Ace LP-1015）は， ”Huey ‘Piano’ Smith” の音源が12曲 収録されたセカンドアルバム．ウェブサイト “Soulful Kinda Music” の “Artist Discographies” には，"For Dancing" のシングルは 5曲しか見当たらないので，7曲は LPのための曲か，アウトテイクかもしれません．アルバムのタイトル “For dancing” の通り，“Doin The Beatnik Twist”（Side 1-5）， ”Susie-Q”（Side 2-2）などの流行りのダンスをモチーフにした曲や，ヒット曲 “Rockin‘ Pneumonia ... ” の曲調に似た “Rockin' Behind Then Iron Curtain”（Side 1-3），"Tu-Ber-Cu-Lucas and The Sinus Blues" （Side 2-4）など，ファーストアルバム "LP-1004" のレベルには 及びませんが，なかなか楽しアルバムに仕上がっています．

Link > http://www.soulfulkindamusic.net/hpianosmith.htm
Link > http://www.soulfulkindamusic.net/bmarchan.htm

LPレコードのコンディションは，”LP-1004”，”LP-1015” 共に ジャケットのコーナーエッジに擦れ，裏面は 経年劣化による変色があります．”LP-1004” のジャケットの表面は，ニス塗り加工が施されていて，とても綺麗．一方，”LP-1015” の表面は，直接印刷のためか 下側が黒色のために リングウェアの擦れが目立ちます．オークションで リングウェア のない ”LP-1015” を探しましたが，見つけることができず，できるだけ擦れの目立たないものを選び 落札しました．レコード盤は，2枚共に ラベルにスピンドルの跡がありますが，針飛びや気になるノイズは ありません．ディスク表面も 目立った擦れや傷はなく，概ね良好なコンディションです．

"Music VF .com" を参考に，”Huey ‘Piano’ Smith” のチャートに入ったヒット曲と LPレコードに収録された曲を 一覧にしてみました．”Huey ‘Piano’ Smith” は，1956年から1961年にかけて ”Ace Records” に在籍．その最大のヒット曲は，"Rockin' Pneumonia and The Boogie Woogie Flu" と ”Don't You Just Know It” でした．彼は，1961年に “Imperial Records” に移籍して シングル4曲をリリース後，1962年に一時的に “Ace Records” に戻り，“Pop-Eye” （Ace 649）をリリース，”Billboard's Hot 100” の51位を記録しました．注目は，ニューオーリンズR&Bの軽快なダンスチューン “Pop-Eye” ，この曲 とても気に入っています．間奏に入る口笛が印象的で，何故か ”Larry Williams” がヒットさせた “Bony Maronie” のフェードアウトする口笛を思い出してしまうのですが...

Link > https://www.musicvf.com/
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Bony_Moronie

だいぶ昔に購入した P-Vine の “PCD-2474 - Rockin' Pneumonia... “ と “PCD-2475 - Pop-Eye” は，１枚目23曲，2枚目25曲，計48曲の “Ace” 音源が収録されCDです．CDジャケットの表紙は，オリジナルアルバムの ”LP-1004” ， ”LP-1015” と同じデザインが使われています．帯は付属していたと思いますが，紛失しています．ライナーノーツは，鈴木啓志氏が書かれていて，エピソードを交えた解説には いつも感銘しております．さすが日本製と思わせるのが，ライナーノーツに英語の歌詞が付いていて，これは なかなか貴重．

さて，音源のほうは ”LP-1004” ，”LP-1015” の曲に加えて，”Huey ‘Piano’ Smith and The Clowns”，”Bobby Marchan”（別名義 ”Bobby Fields” ），”Eddie Bo”，”Junior Gordon” の曲が追加されています．”LP-1015” の “We Want Him Under Alimony” は，このCDに見あたらないので，おそらくマスターテープの紛失か 原盤からの採録ができなかったのかもしれません．CD全体を通して，ほぼリリース順に選曲されていて，ヒット曲，ダンスナンバー， “The Coasters” 風のノベルティソング（ ”For Cryin’ Out Loud”， “I Tried”， “If It Ain’t One Thing It’s Another” ）などが収録されています.

Link > https://ja.wikipedia.org/wiki/Pヴァイン
Link > https://ja.wikipedia.org/wiki/鈴木啓志
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Eddie_Bo
Link > https://www.discogs.com/artist/474899-Junior-Gordon

“Huey ‘Piano’ Smith” は，ニューオーリンズR&Bの偉大なピアノの伝統を踏襲し，”Professor Longhair” と ”Fats Domino” の足跡をたどったと言われています．彼の曲は，ユーモアがあり，ナンセンスな歌詞が持ち味で，ユニークなピアノ演奏のスタイルを取り入れたアーティストの1人でした．“Huey ‘Piano’ Smith” のサウンドは，素朴すぎて，”Fats Domino” のような ポップなクロスオーバーの魅力に匹敵することは なかったようですが，その辺のことは 音楽評論家に任せることにします．理屈抜きに楽しいアルバム ”Having A Good Time”（Ace LP-1004）を聴けば，彼が ニューオーリンズR&Bの素晴らしいピアノ演奏者，そしてソングライターであったことが分かるでしょう．

Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Professor_Longhair
Link > https://en.wikipedia.org/wiki/Fats_Domino