往年のDooWopファンにとって忘れられないグループが "The Five Satins"．リーダーの "Fred Parris" は，1936年生まれで現在78歳になっていますが，Facebook や YouTube を見ると，今も "Richie Freeman" らとともにステージ活動を続けているようです．"Fred Parris" の足跡をたどると，1954年に米国北東部のコネチカット州ニューヘイブンで結成されたDooWopボーカルグループ "The Scarlets" が前身グループ，1955年にメンバー全員が軍隊に召集されたためにグループは 解散しました．"Fred Parris" は，兵役中の1956年に 新しいグループ "The Five Satins" を結成，1956年6月に自身が作詞作曲したバラード "I'll Remember (In The Still Of The Night)" がニューヨークの "Ember Records" からリリースされると，R&Bチャート3位の大ヒットを記録，ところが不運にもこのヒットの最中に "Fred Parris" は 日本に配属になりました．この時期の苦い経験を回顧した "Fred Parris" のコメントが LPレコード "The Greatest Hits Of The Five Satins Volume Two"（Relic Records - Ember 5013，1970年代）のライナーノーツに 記載されています．

－ 私たちは，日本に駐留しているときに横浜のキャンプ座間で小さなグループを作って歌っていたんだ．あるとき男が入ってきて「その曲を聴いたことがあるよ．"In The Still Of The Nite" という素晴らしい曲だ！」と言うので，「OK！」と言った後，ふと考えて，彼は "The Five Satins" のことを知らないなと思い，私はこの曲をベースボーカルで歌ったんだ．すると16小節を歌った後に彼は私たちを止め，「違うよ！そうじゃないよ，あんたのはベースボーカルだよ！」と言うので，私は「これが正しいと思うよ」と返すと，彼は「何を言っているか判るか？ 俺はレコードを聴いたことがあるんだ！」と私の話をさえぎった．私は それ以上 彼に言葉をかけなかったが，しばらくして一人の男が彼に 私がこの曲を作詞作曲し，アレンジを手掛け，リードボーカルも務めたことを伝えたんだ．私は，それ以後 彼に会うことは なかったし，彼も かなり恥じたのか，けっして姿を見せなかった．しかし，もし彼が聞いていたら 私はこのように言ったと思うんだ．私には，何もわだかまりはないし，そして･･･あんたはその通り正しかったよと！ (笑い)　－
（ライナーノーツ ："Little Walter DeVenne"）

"Fred Parris" が 日本に配属になったため，"Ember Records" は リードボーカルの代役として "Bill Baker" を起用，1957年7月にはバラードの名曲 "To The Aisle" がリリースされ，R&Bチャート5位のヒットを記録，これを黙って見ているしかなかった当時の思いが "Fred Parris" のコメントに込められています． "Fred Parris" が今も現役のボーカリストとしてステージに立っているのは，その悔しさが 支えとなっているのかもしれません･･･

Link > http://en.wikipedia.org/wiki/The_Five_Satins
Link > http://en.wikipedia.org/wiki/Little_Walter_DeVenne

"Ember Records" 期にリリースされたLPレコードは，"The Five Satins Sing"（ELP-100，1958年），"The Five Satins Encore Volume 2"（ELP-401，1961年）の2枚，ミリオンセラーとなった "In The Still Of The Night" を含むヒット曲が収録されています．シングルレコードでは，除隊後の1958年に "The Five Satins" を名乗ることができなかった時期，"Fred Parris and The Scarlets" のグループ名で "Klik Records" からリリースされた "The Voice / She’s Gone (With The Wind)" がターニングポイント．"The Five Satins" のディスコグラフィーは，"Rocy-52" なるウェブサイトが大変参考になります．

Link > http://www.rocky-52.net/chanteursf/five_sat.htm

グループとメンバーの変遷を Wikipedia を参考に一覧にしましたが，ウェブサイト "Rocy-52" と一部異なります．"Fred Parris"，"Bill Baker"，"Richie Freeman" 以外は 資料がほとんどなく，メンバーの写真と名前が不明．LPレコード "The Five Satins Sing"（ELP-100）のカバー写真は，"Bill Baker and The Five Satins" のメンバーを写したもので，トップにいるのが "Bill Baker"です．"Fred Parris and The Five Satins" は，LPレコード "The Five Satins Greatest Hits Volume One"（Relic Records - Ember 5008，1970年代）のカバー写真が参考になります．トップ左から "Fred Parris"，"Richie Freeman" ，他のメンバーはよく判りません．

ジャケット表面の一部に微小なすり傷がありますが，貼り合わせの劣化や汚れはなく，コンディションは良好．レコード盤のほうは，ほぼ新品状態です．

ファーストプレスのオリジナル盤は，赤のラベルに黒文字のロゴ．セカンドプレスのラベルは，パステルカラーのドットに炎をイメージした "Burning" ロゴがレイアウトされていて，とても綺麗なデザインです．